SS星ヶ丘東の歩み(その1) 資産状況を診断、このままではまずい

学者志望大学院生(26歳)、不動産賃貸業を継ぐ

 結婚し、子供ができた。それを機にきちんと祖父の不動産賃貸業を手伝うことにした。跡を継ぐはずだった父はもういない、祖父は80歳になろうとしていた。恐らくそれが自然の流れだったんだろう、学者になる夢は一時休止だ、大学院まで卒業させてもらっただけでも幸せなことだと自分に言い聞かせた。直後に祖父は脳卒中で倒れたことを思えば、このタイミングで僕が業務を引き継がないでいたらどうなっていただろう。それを考えると背筋が寒くなる。

 僕の最初の仕事は資産状況、収支状況の把握だった。各不動産がどのように使われ、どのような収入をあげているのかリストアップした。収支バランスを見ると、ある一つの物件が全体の収入の半分以上を占めていた。安定しているようにみえる資産状況も、その物件に何か予期せぬことが起きればたちまち砂上の楼閣だ。リスクヘッジをしなくちゃいけない。そのためにも相談できる人が必要だ。祖父が依頼していた税理士は、祖父がつくった帳簿をもとに申告をただ事務的にこなすだけだった。もっと積極的に提案をしてくれるアドバイザーが必要だ。

資産状況の分析とシミュレーション 3代で資産はなくなる

 まずは税理士を探し、資産状況の分析を依頼した。そしてできあがった試算によれば、祖父から母、僕へと試算が受け渡されていくにつれて資産は3分の1ほどに減少する。まさに「3代で財産を食いつぶす」のを待っている状況だ。そこで資産の整理を進めた。収益を生まない不動産を処分し、それを元手に不動産を収益不動産へと変化させる。

 まず最初に手をうたなくてはいけないのが、名古屋市名東区代万町にあった土地だった。祖父の世代は、子や孫にいつか家を建てる土地を残すことを第一に考える人が多い。しかし現代の価値観で言えば、自宅を建てるのに200坪を超える敷地は必要ない。この土地は税金対策で畑にしてあった。だが多少安くなったと言っても毎年数十万円の税金がただ出て行った。また、いつかは必ずやってくる相続税は、確実にその土地の数分の1を削り取っていく。土地を削られたくなかったら、毎年あげる収益からまかわなくてはいけない。駐車場経営はローリスク・ローリターンだが、税金をひいて手元に残るのはわずかだ。残念ながら駐車場の収益では日本の高い相続税をまかないきれない。そこでミドルリスク・ミドルリターンで節税効果が高い賃貸住宅建設の計画が選択された。

個人の智恵は頼りない、チーム結成、法人化

 戸建て住宅、いわゆる借家はいくつかもっていたが、共同住宅の建設は祖父にとっても初めてだった。まずは建設にあたってのパートナーが必要だ。建設業者の言いなりでなく、冷静な判断とアドバイスを下すことができるパートナーが。僕は何冊もの本を読み、いくつものセミナーに足を運び、何人もの不動産コンサルタントと会った。こうして最終的にコンサルタント契約を結ぶ事務所を決定した。

 祖父が個人事業としてやっていた事業は法人化し、僕が代表取締役になった。節税への期待もあったが、今後は僕主導でやっていく、その決意の表れという側面が大きかった。問題には外部を取り込みながらチームで取り組んでいく体制を確立したい、そのためにも法人形態は都合がよかった。



一度は計画頓挫を覚悟する大打撃、詳しくは その2